キャスト
- 小百合
- 和田都
- チェリー
- 福本伸一
- 熊田
- 熊川隆一
- 雪路
- 長谷川晃示
- 古賀
- 竹内義明
- 銀次
- 久保孝一
- パン
- 与儀省司
- かめこ
- 早川晃子
- すずめ
- 遠藤由美子
- たま
- 平野裕子
- 常盤津
- 青木朋子
スタッフ
- 作・演出
- 鈴木聡
- 美術
- 福島正平
- 照明
- 板谷静男
- 音響
- 祇園幸雄
- 衣裳
- 佐野典子
今吉順子
- 小道具
- 萱野忍
- 振付
- 水田裕子
- 宣伝美術
- 森永正広
- 協力
- 演劇集団キャラメルボックス
劇団てあとろ50’
劇団風力潜水艦
- 制作
- 喇叭屋制作部
近藤達朗
- 企画・製作
- サラリーマン新劇喇叭屋
アブないサラリーマン
朝の通勤電車というヤツは、アブない。痴漢がでるとかスリがいるという意味ではない。サラリーマンやOLたち一人一人の、あの目がアブない。アレはとてもへーんなことを妄想している目だと思う。たとえば、隣で新聞読んでるヤツの正体はカッパにちがいない、とか。私の前世はアライグマだったんじゃないか、とか。ライバル社の機密文書を盗みたいのだがルパン三世にはどうやって連絡をとればいいのか、とか。幻想してる。トリップしてる。おそらく朝の通勤電車というヤツは、とっても宙ぶらりんな場所なのだ。家を出て会社へ行く、その途中。パパでもなければ、課長でもない。じぶんがなんでもない状態。しかもさっきまで眠ってたから、夢のシッポをひきずっている。そんなこんなで、朝の通勤電車で人々は、アブなく、バカバカしく、素敵な幻想のナワをふりほどく。きっとサラリーマンたちは、口にこそ出さないけれど、そんじょそこらのゲージツ家より、根性の入ったトリップを毎日毎日、楽しんでるんじゃないだろーか。旗揚げ以来、サラリーマン新劇・喇叭屋は早くも第5回公演を迎える。ここらで一発、サラリーマンを舞台に登場させたい。「小百合さんのビル・エバンス」は、大衆食堂で働く娘に一目惚れした中年サラリーマンの、ヘンテコリンな恋と幻想の物語である。滅び行く街「ゴールド街」を舞台に、オカマさんや流しのギター弾きや、歌謡曲や、そしてもちろんエバンスの美しいピアノが入り乱れる。朝の満員電車のアブないノリで、東京砂漠のサラリーマン・OLさんと、未来のサラリーマン・OLさんたちに、愛をこめてお届けしたい。
作文「素敵なエバンス」鈴木聡
午前5時のビル・エバンスほど美しいものはない。私はサラリーマンなので朝方まで残業することがよくあるのだが、そういう時、部屋に帰り、エバスンのレコードを聴くと疲れもブッ飛ぶんである。セブンイレブンで買ってきたオデンをつつき、ビールを飲み、「ワルツ・フォー・デビィ」に身を委ねる。あー、極楽、極楽、と私はおもむろにまるで温泉につかったおじいさんのように「ふぁーっ」と激しくなごむんである。きっと、ニッポンのサラリーマンの中には、こういう1日の終わり方をしている人が結構いるんじゃないか。伝票や折れ線グラフや上司の小言や接待で、ケガレた自分のカラダをエバンスのピアノでオキヨメする。そしてやっと深い静かな眠りにつく。もしもエバンス・シャワーが、世間にまみれたサラリーマンのギザギザハートを洗い流せるなら、それはエバンスのピュアが世間に負けないタフなピュアだからだろう。会社や税金や家庭生活に負けないタフなピュア。そんなもんあるかバーロー、と疲れ果てる私にエバンスは此処にあるさと囁くようだ。